ちょっとオモシロタノシズムを活用した販売強化について思い付いたことを書いてみます。
取引というのは一方が何かを差し出し、他方がそれに対して価値に見合う対価を払って成立します。一般に「相手のある話」と言って、言い訳じみたコメントを挨拶がわりに使う結果の不確実性を全面にアピールするのがセールスの嗜みである。
取引相手との関係性によっては対等ではない取引を強いられることもあるでしょう。不利な交渉を避けたいと願っていても、いざ取引が始まってしまうと何故だか思った通りの不利な展開に持ち込まれてしまうこともあるのではないでしょうか。
なぜこのような事になってしまうのかというと、無意識の中で「この交渉は不利な結末になる可能性がある」と自らストーリーを書いてしまっているからだと考えられるのです。
ではこの取引を有利に進められると思い込むだけで事態を変えることはできるか。これは心底思い込めるかどうかに掛かっていると思います。
そんなバカな事が起こるわけがないと思った方は、既に不利な交渉への一歩目を踏み始めてしまっています。
では取引を有利に進めるというのはどういう事でしょうか。何を勝ち取れば「有利に進めた」と言えるのでしょうか?これをフワッと考えている限りは、やはり不利な交渉に引き込まれていくことになると考えられます。
そこで具体的に勝ち取る条件を検討します。そもそも、この取引で相手が求めるものは何か。交渉が成立する最低限の線は何か。つまり、取引相手が何を勝ち取ろうとしているかを考えることになります。取引相手の現状を把握し、在りたい姿を一緒になって考えることが出来るか。
次に考えるのは、自分と同じような立場で取引相手に何かを差し出そうとする者の動きです。この相手が差し出すものが想像できると、こちらも差し出すものを決めることが出来ます。
その取引の瞬間だけではなく、価値を交換した後の取引相手のことも想像できると、より動的に相手の求めている事が分かるようになると思います。このような考えを進めていると、いつしか取引相手を当初のギブ・アンド・テイクのみの関係で成立する関係ではなく見えてくると思います。
取引を不利に進めたくないのであれば、取引相手への好奇心を味方に、単なる物の提供だけではなく、体験の提供(より長い時間軸で価値を提供していく)に視点を変えることが効果的です。
全ての取引をこのように対応することは簡単ではありませんが、表面上で求められているものに反応することを辞めて、相手の深層に在って未だ言語化されていないことを引き出すように活動をすれば、取引相手も想像していなかった未来の話ができるのではないかと思います。
お届けしたいのは物ではなく物語です。
取引に至るか至らないかはどっちもいいし、どっちでもいい・・・
というわけにもいかないのですが、商談の失敗事例の研究をしてみると、そもそも取引の前提に立たぬまま、誰かの合図で始まる「公平な顔をした商談(書面での見積照会」からスタート)に入っているケースが散見されます。
不況に強いと言われる最強の営業の型、チャレンジャーセールス*1。場合によっては、お客さんが欲しいと言ったものを納入しないのに感謝されてしまう、この型を実践するセールスは、やはり上で述べたようなストーリーの共有という手法を取ります。そして、この営業スタイルは、オモシロタノシズムに通じます。
結局、フワッとした話しかしてへんやないか!時間返せこの野郎!と怒らないでください。結局、相手のある話ですので。
それでは。
*1: マシュー・ディクソン、ブレント・アダムソン著『チャレンジャー・セールス・モデル 成約に直結させる「指導」「適応」「支配」』(2015年)
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