デパートでのお買い物の話ではありません。
一見分かりにくい思考百貨店の視点エレベータの利用方法の話をしてみたいと思います。思考百貨店って何?視点エレベータって何?恐らく分かりにくいと思いますが、先ずは読み進めて頂ければと思います。
ある知り合いがコンサルファームに相談を持ちかけているとのことで、いつものように好奇心剥き出しでどんな話なのか聞いてみました。現在のビジネスが伸び悩んでいるので、自分の強みを活かせる別のビジネス機会を検討したいとのこと。ところが、この相談者とコンサルの対話がどうも噛み合っていないようなんです。
何が噛み合っていないかというと相談者が達成したいゴールと相談に乗っているコンサルが導いている方向性なんです。このまま対話を続けていくと、華々しいアクションプランが出来上がったものの、相談者が一歩目で落とし穴に落ちてしまいそうです。ということで、間に挟まれつつある(いや、挟まれに行こうとしている)今日この頃です。
なぜこんなことになったのか、初歩的ですが、2つ原因を考えてみました。
まず相談者が自らの強みだと主張していることを、コンサルタントが鵜呑みにしてしまっていることです。深掘りが不十分だとこういうことになりがちです。もっともらしい強みの裏側にある弱みから考えると、相談者が主張していることが本当に強みと言えるかどうかが見えてきたりするものです。
このケースでは「多能工マインド」を強みとしてあげているのですが、どちらかと言えば結果として一人が何でもやらなければならなくなっている組織の弱みが、一部の人財を多能工に仕立ててしまっているだけのようにも感じるのです。
問題なのは、その環境に身を置いたとしても、必ずしもその能力が身に付くものではなく、強みだと答えていることがその本人の資質に依存するということです。そして組織の強みを持続しない個人の能力と間違えて整理すると大前提の狂ったプランが出来てしまいます。
本来の強みはお客様から見たときに価値を感じてもらっているかどうかなのですが、多能工マインドだからこその価値提供まで至れていないという観点からも、これを強みと断定して先に話を進めてしまうのは危険だと考えました。
次に相談者側の問題ですが、コンサルファームによって美しく成形された資料を前に、単に自分が話したことを整理した強みを前に自信が付いたのか、それを是として話を先に進めてしまったのです。その結果として、整理された強みが活かされる事業機会の検討が進められ、忠実に「誤って導き出された強み」が活かせる複数の可能性が提示されたわけです。
そして相談者は、その複数の可能性のどれもアクションに移せそうにないと感じているのです。軌道修正が必要です。アドバイスとしては強み発見のセッションに立ち返って、真の強みを発見することにコンサルの時間を使った方が良いとするつもりです。
このようなコンピテンシーを探るインタビューで効果的な問いは「なぜそうなのか」です。コンサルタントなら最も多用する問いのはずなのですが、この話に登場する方はこれが上手く出来ていないと思われるのです。
この「なぜそうなのか」という問いは繰り返し使うことで、問題の深掘りができ、思考百貨店を高さ方向に移動することができます。思考百貨店には低層階の「具体」から上層階の「抽象」まで複数階ありますが、課題のある階を求めて視点エレベータで相談者とコンサルタントが一緒に移動します。「どの階で降りるか」というのが問題に当たります。
コンサルタントの中には上層階が得意な方、低層階が得意な方がいらっしゃるので、相談者はそういう見極めもしなければいけません。コンサルタントの視点から見ると、探し物をしている相談者が口にしていることを鵜呑みにすると違う階で降りてしまう可能性があります。
同じことは、お客様が「これが欲しい」と具体的なものを要求される際にも言えることがあります。よく話を聞き、深掘りをしていくと必要なものが全く別のものだったという話は結構聞きます。誰かから話を聞いた時に「本当にそうなのか」という問いもセットにすると正しい目的階に降り立ったかどうかチェックできるかもしれません。
上手くお伝えできたかどうか分かりませんが、思考百貨店での探し物をされる際は良きお供をお選び頂ければと思います。
コメント
コメント一覧 (6件)
ショッピングは手を繋いで一緒に見て回るのが楽しいですね。
別行動してどこそこで待ち合わせ。
は大概すれ違うものです。
そういう時は1階の喫茶店で待ち合わせ。
一緒にウロウロするのもアリですね。その時間も楽しめたりしますからね。
もしかすると思考百貨店の探し物も家族や友人なら同じことなのかもしれません。
タチが悪いのはお金を払って道先案内をお願いしている場合ですね。
ツアーコンダクターがツアー客と一緒に迷子になってしまってスケジュールが大幅に乱れてしまっては旅も台無しです。
思考百貨店の視点エレベータって面白いメタファーですね。
ドリルを売るんじゃなくて穴を売れ!という話に通じるものがあると感じました。
そもそもなんのために穴が必要だと「思ったのか?」を深堀りしないと、欲しいのは穴でさえないこともよくありますから。
ドリルのたとえ話好きですね。マーケティングのレクチャーで使う似たような話に教会を建てる人や石鹸の代用品というのがあります。
なぜ?と疑問に思う能力って大切ですよね。
降りる階がちがう―
これとても多いですね。とりあえずで最上階や1階にとするのも、なんだかなぁ。
やはり多いと感じられますか。
アドバイザーが得意な階に客人を無理やり降ろしてみるのも強引で、ちょっと違いますよね。